父はすい臓ガンでした。
見つかったときには既に転移もありステージ4b、余命は3ヶ月弱と告げられました。
肺結核まで併発し、隔離病棟へと移され日に日に弱っていく父の姿を見つめながら、死に逝く父に自分が出来ることはなんだろうと考え続け、辿り着いたのは「死んで欲しくない」という想いを伝えること。
自分の家族が、自分が死ぬということを受け入れてしまったら、父は悲しいんじゃないかなと思ったのです。
だから、じたばたしました。
ガン治療に関する様々な文献を調べ、最先端治療の研究をしている大学教授のお話を聞きに行き、毎日死にもの狂いで勉強しました。
ほどなくして、父が他界しました。
ガンの発覚から数ヶ月、永遠のように感じた時間も振り返ればあっという間のことでした。
父の葬儀も終わり、しばらくして、自分が今何をしているのかを思い出せなくなりました。
続いて動けないほどの倦怠感と唐突に襲いくるパニックの発作、自殺衝動。頭を支配する「もうダメだ」という思い。
うつ と診断されました。
処方された薬は抗うつ剤3種(SSRIと三環系)と抗不安薬2種(ベンゾジアゼピン)でした。
薬の効果は覿面で、割と早く日常に戻ることができました。
しかし、薬を服用し始めてから一年が過ぎた頃、自分の言動が段々とおかしくなっていることに気が付きました。
支離滅裂な言動に、これまででは考えられないほどの攻撃的な口調、異常な食欲とそれによる体重の増加。
もはや自分がうつなのか薬でおかしくなっているのか分からなくなり、「薬をやめよう」と決意しました。
父の闘病中、末期における緩和ケアについて調べたとき、死の恐怖からくる精神錯乱やパニックをなだめる補完療法があったことを思いだし、深く学ぼうと決めました。
選んだのはフランス式のアロマテラピー。
抗うつ薬を服用しながらのスタートでした。
アロマを学んでいくなかで、「薬をやめるためにはどうすれば良いだろう」と考え、日々の食事の改善とアロマテラピーを自分に試していきました。
その甲斐があってか、薬も少しずつ減らすことができ(かなり苦しみましたが)、今ではまったくの健康体です。
よく「うつなんて甘えだ」「心が弱いだけだ」と云われることがあります。
ボクは、自分自身がうつを経験して「それは違う」とハッキリと感じました。
終わりの見えない不安とストレスのなかに漬け込まれれば、人は誰でもうつになります。
人間関係、職場や学校、恋愛や結婚、将来の不安、
何かとストレスの多い現代社会で心と身体を病んでしまう前に、自分自身を何とか自分で守り抜く、そのための手段のひとつがアロマテラピーです。
人々が自分の生を謳歌するために、その土台となる“心と身体”を守る方法を伝えていく。
それが自分の使命だと思い、今は、アロマテラピーの講師として活動しています。